「迷宮物件FILE538」です。
みなさん、こんにちわ。水の心です。
今日は、1987年バンダイOVA「迷宮物件FILE538」です。
この作品はバンダイから出された、シリーズOVA「トワイライトQ」の2作目として製作されましたが、この「迷宮物件」でシリーズは中断終了しています。
原作、監督は「押井守」氏
魔女の宅配便で、作監
同主題歌の作詞を担当。娘さんが「ポニョ」のモデルになったそうです。
スチル撮影は「樋上晴彦」氏
イノセンスまでの劇場版押井作品にコンセプトフォトとして参加
キャストは
男「瀬川哲也」
少女「兵藤まこ」
ラジオの声「千葉繁」
1987年といえば、
押井守氏は「天使の卵」から2年後「赤い光弾ジリオン」に絵コンテで参加したり、1988年OVA「パトレイバー」製作直前の年になります。
雇い主から依頼されて、ボロアパートに住む親子の調査を始めた探偵。
その親子を調べれば調べる程、異世界の扉を開けてしまう、
というストーリで、
いわゆる、どんでん返しというか謎解きは、3回くらいあり、更に最後のシーンで、ちゃぶ台ひっくり返して終わります。
ストーリー的には、お馴染「押井ワールド爆発」なので、ある意味安心して、観ていられ、時間的にも30分と短くて、テーマがストレートに作られており、ダレずに見る事が出来ます。
名付けて「押井言葉」というんでしょうか、独白を独特の言葉回しで語り、まるで「詩」の様にして、シーン毎にのせて、その世界の状況説明、設定を、修飾し、補強していきます。
「うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー」のメガネの独白で完成された「アレ」です。それは初実写映画「紅い眼鏡」で頂点に達し、観ていたファンを混乱と、睡魔のどん底に叩き落としました。
また、この「迷宮物件」では、実写への接近と、虚構に真実味を与えるために、
「樋上晴彦」氏のスチル撮影を加工して使用しています。
都会の風景、街角の風景を、モノクロで撮影し、その風景写真に、マゼンタ、シアン、イエローの様な、割と極端な色をポイントでのせて、説明のシーンとして入れています。
そして、空も、心象風景の一部として、写真を色加工し、流れる様に撮影しており、これも印象に残ります。
やはり押井氏がコンテを切っていると思うので、
ビルの谷間からの仰角や、ショーウインドウに写った空、ジャンボジェットなど
「ビューティフル・ドリーマー」や「攻殻機動隊」で見た様な、画面構成が出てきます。
また、少女の叫ぶ、生をイメージした「おさかな」や、
男のTシャツに、死を意味する「BIRD」と書いてあるところから、既に聖書からの記号を、ストーリーに取り入れていると思われます。
ストーリーは、ほぼボロアパートの一部屋と、アパート周辺で展開されますが、動きも無く、舞台演劇の様に見えます。
主演の「男」の声「瀬川哲也」氏は「劇団転形劇場」出身の俳優で、市川悦子主演「わらびのこう」他、映像作品に出演されています。
またwikiにリンクが無く、私も演劇には造詣が無く、あまり詳しい活動がわかりませんでした。そして残念ながら2008年に逝去されている様でした。
瀬川氏は、押井氏の作品で、あまり聴いた事が無い声で、この作品だけの出演だったのか、と思います。
が、声が絵から浮いた感じも無く、意図した暑苦しい中年の絵に、独特の声がよくマッチしていたと思います。
その昔「うる星やつら」後の、押井氏の活動は、地方に全く聞こえてきませんでした。首都圏でなにか活動されている事は、アニメ誌から散見出来たのですが、それ以上の事はわかりませんでした。
また書店で「とどのつまり・・・」という漫画単行本を発見し
「やたら、薬莢が飛んでるな!」と思い、後日、同書店に買いに行ったら、売り切れていて、在庫を尋ねた書店の爺に、なぜか怒られた記憶があります。
押井氏は、新しい物に飢えていたファンの前から、絶頂と同時に消えてしまった様に思えました。
コンビニに箱舟がやって来るという設定の初期「天使の卵」や
天使の化石を巡って、元々ルパンはいたのか?という押井版「ルパン三世」
なにか、初期~中期の押井氏は、得体の知れない大型新人監督という感じで、調べているだけでもワクワクしてきます。
現在、劇場版実写パトレイバーも公開され、もはやアニメ界の巨匠になってしまった押井氏ですが、この初期~中期の「迷宮物件」は、わかりやすく監督のその実力を感じる事の出来る作品です。
色々あると思うんですが、そろそろ一周360°回って、もう少しコメディ寄りで、エンタメドタバタ作品を撮ってもらいたいな~と個人的には思っています。
それでは、また次の更新まで!