吉川晃司主演「すかんぴんウォーク」です。
みなさん、こんにちわ。水の心です。
監督「大森一樹」氏
主演「吉川晃司」氏
「山田辰夫」氏
「鹿取容子」氏
サントラは未発表で、本編はなぜか未だDVD化していないそうです。
その昔は、好きなジャンルがハリウッドアクションで、しかも、いい邦画に出合った事がなく、どうしても邦画に対して、あまりいいイメージを持っていませんでした。
どうして陰々鬱々、家庭内の暗い私小説の様な内容が多く、理解しにくく、テンポが悪いんだろう。
すぐに、やーたら長くてつまんない濡れ場になるし、任侠崇拝映画ばかりだし、ガンアクションも、4連発の電着銃のステージガンだし、と劇場で期待せずに観始めました。
しかし、この映画が始まると、なぜか引き込まれていきました。
街の空撮から始まって、港の岸壁に集まる労務者達をロングで撮影し、
そこから地上に切り替わり、
泳いで沖から上がって来る、初々しい「吉川晃司」氏演じるユウジ。
すらりと長い手足で、街を駆け抜けて、あっという間に喫茶店のボーイとして店に転がり込みます。
そして、先輩ウエイターで、ドン詰まり感あふれる歌手志望の「山田辰夫」氏演じるヨシオ。
ユウジと最後まで繋がりがある、売れない女優アミに「鹿取容子」氏、
ウェイトレスに「高瀬春奈」氏、
同じアパートの住人に「平田満」氏、
ライブハウスのオーナー「原田芳雄」氏、
かなり有名な人を配置し、出て来るいろんなキャラクターに生命感を与えます。
そして上記の人達を含め、出て来る人達のほとんどが、夢に挫折し、悩み、生活に追われて、社会の中に埋もれています。
前半は、主人公ユウジが、下積みの中から歌手になるまでのサクセスストーリーです。
デビューしたての素朴な吉川氏が、主人公ユウジを、素で演じており、素直な表現に好感が持てます。
反対に、歌手志望の夢を追い続けるヨシオは、どんどん頭角を現すユウジに置いて行かれ、
ついにメジャーデビューする為、ライブハウスを去るユウジの、抜けた穴を埋めるために、ヨシオはステージに立ちます。
ユウジの代打で歌うものの、そのあまりの歌唱センスの無さに、身内のバックバンドすらステージから降り、
ユウジの曲を聴きに来た観客は、暴れ、叫び、物を投げつけヨシオを批難します。
そこで強烈に記憶に残るのが、観客に対して逆上し、開き直るヨシオです。
人生で何回かは、あの様な場面に遭う、と思います。
自分に実力が無く、何もできず、つけ込む様に吊し上げられ、勝ち目も無く、ズタボロにやられるしかない時があります。
徹底的に謝るか、尻尾を巻いてトンズラするのが普通です。
しかし、ヨシオは、踏みとどまります。
この映画は、青春群像劇で、ユウジがデビューするまでの間に、
沢山の「なり切れなかった人」、いわゆる「~崩れ」の人たちが出てきます。
その度に、ヨシオはユウジに「あんなになったらお終いだ」とつぶやきます。
けど、現実はほとんど「あんなに」なるんです。
観た時は高校生だったので、良くわからず、その山田氏の演技やストーリーに何かを感じただけだったんですが、
長く生きてみると、世の多くの人は「こうありたい」と思いつつ、夢破れた人がほとんどなんだ、という事を知りました。
私もその一人です。
その後、ユウジは、ヨシオと別れデビューしたものの、意見の違いから事務所をやめ、自分の音楽を探すために、閉じこもり、力を溜めていき、事務所を変え再デビューしヒット。ですが、スランプに陥ります。
そして、なんと「キレ話芸」でライブハウスの顔になり、テレビ出演予定が入るまでになったヨシオと再会します。
2人は、お互いの立場を確認し、エールを送り、それぞれの道に戻ります。
ラストは、スランプからの脱出を、イメージで表わし、曲と共にエンドクレジットが流れます。
調べると、大森一樹監督は、本作含め、吉川晃司主演「民川裕司3部作」を作ったそうです。
今作で完結させず、次回につなげるその為なのか、
多くの登場人物に魅力があって、引き込まれていく前半部に比べ、
後半は、ブレーキがかかる様に、話が動かなくなり、イメージシーン重視になり、
新人の吉川氏に、一人芝居に耐えられる深みもあるわけ無く、観ていてダレてきました。グッとくる前半があるだけに、残念な作りです。
この映画の同時上映は「うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー」です。
そのため初公開の週末に映画館に行きました。
吉川晃司氏の人気は物凄く、立ち見が出るくらいで、周りの雰囲気も、アニメの子供中心の客層と違い、やたら「普通の」若い男女が多い。
とは言え、当時は私も十分若かったハズなのですが・・・。
地味なアニメファン、キャーキャー言ってる晃司ファンの不思議な劇場の客層でした。
そして、何とか席を確保し、目当ての「うる星やつら」を見ていた時、
立ち見の吉川ファンの高校生位の少女の一言
「どうして、私がこんなにワケのわからないものを見なくちゃならないの?」
・・・。
人生いろいろありますが、この「すかんぴんウォーク」は、隠れた逸品的アイドル映画なので「オッ、そういうのあった!」と思われる方、観る事の出来る方は、是非とも視聴をお勧めします。
異常につまらないバラエティー番組や、公開時期に合わせた量産映画を何回も流すより、こういったキラリと光る映画を、高画質で放映、解説してくれた方が、絶対視聴率上がると思うんですが・・・
そうですか、ダメですか、ハイ・・・。
それでは、また次の更新まで!