我慢なので。懐古中年、Goes on!

無職を続ける、好き嫌いの激しい中年が、80’sアニメ、音楽、映画等、趣味を懐古しながら、日々の生活を節約し、我慢を続けて行くブログ。

映画「東京難民」です。

 みなさん、こんにちわ。水の心です。

今日は2014年の映画「東京難民」です。 

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原作は「福澤徹三」氏の同名小説。

監督は「佐々部清」氏。

助監督時代、86年「コミック雑誌なんかいらない!」に参加されています。私が学生の頃のエポックメイキングな映画です。

 

配役は

主人公、時枝修に「中村蒼」氏

茜に「大塚千弘」氏

順矢に「青柳翔」氏

瑠衣に「山本美月」氏

小次郎に「中尾明慶」氏

篤志に「金子ノブアキ」氏

鈴本に「井上順」氏

 

 観るキッカケは以前「東京ゾンビ」というコメディ映画があり「東京難民」もその題名から、パニックアクション映画だろうと、軽い気持ちで観始めました。

 

「・・・俺はもう終わっている」

 

私の想像とは全く違う内容でした。ですが物凄い吸引力を持っていました。

 

 突如として仕送りが止まり、大学を除籍され、マンションも強制退去させられる主人公「修」。

親も当てにする事が出来なくなり、広い東京で流転しつつ「生活する為の生活」を始めます。

 

早速始めたバイトも続かず、次第に所持金は無くなり、ネットカフェで、その日暮らしが始まります。

ネカフェ難民です。」

 

 そんな中、ひょんな事から遊び人の女「瑠衣」とホストクラブに行き、借金を作ってしまい、結果そこで働かせてもらう事になります。

 

仕事にも慣れ、お客の「茜」も付いた頃、遊び人の瑠衣がやらかした高額のツケの為、茜へ借金を頼みます。

その額100万円。

 

しかし、その大事な100万を新米ホストが盗み失踪。

結果、遊び人「瑠衣」の落とし前は、風俗に「沈む」事。

200万で売り飛ばされる事になります。

 

しかし、瑠衣、修、先輩ホストの順矢は3人で「飛び」ます。

屈託のない笑顔が少ない映画ですが、この時は主人公達に満面の笑みが広がります。

 

 その後、元ホストの2人は、千葉の建設現場の飯場に流れ、ひと時の解放感を得ますが、そこでそれぞれに過去がある作業員の話を聞きます。

 

作業員の自分たちは、貧困ビジネスの真っただ中にいる事。

一度でも失敗したら立ち直れない社会の仕組み。

 生活保護ビジネスにつかまっていた人は

「一番つらかったのは、何もすることが無かった事だ」と。

 そんな中、修の行動で、追っ手に居場所がばれ、順矢は、危険な中国との麻薬の運び屋になり、甘い事を言う修はホストクラブ支配人の「篤志」にシメられます。

 

ホストクラブ支配人の篤志の言葉

「金より大事なものがあるなんて思ってんじゃねぇよ!」

 

半殺しのリンチの後、河川敷に捨てられていたところ、

ホームレスのオジサンに救われ、またそこで御厄介になります。

 

「自分が終わっている事に気が付いた半年だった。

だから、全てを忘れて虫(名無し)になる事を決めた」

と修の名前を捨ててホームレス「茂」として生きる事になります。

 

そこから、修は伏線を回収していき、何とも苦く、悲しく、それでも生きていく様を見せてくれます。

それぞれのケジメを付けた後、修はホームレスのオジサンとも別れ、河川敷の朝焼けの中、父親を探しに旅立つところでストーリーは終わります。

 

人との出会いがこの映画の骨子だと思います。

 

この映画は、完全なドキュメンタリーでは無く、若い主人公の、出会い、挫折と成長、に焦点を当てているので、勇気づけられる様に、希望が残るラストになっています。

 

主人公は、ストーリー上、辛酸をなめ、どんどん優しい人間性になっていき、それは元来持っていた長所なのですが、何とも不器用、実直に過ぎ、周りはどんどん不幸になっていくのも観客は見守らなければなりません。

 

また最近、修と対極にいると思われたホストクラブの支配人、篤志は、その言動などから、実は良い人ではないのか?と思う様になりました。

夜の店で企業舎弟という厳しい世界にいるので、一般とは尺度が違うのですが、筋は通っている、と思えるのです。

 

 ホームレスのオジサンを演じた井上順氏が、2014年初上映の舞台挨拶で、自身のヒット曲「お世話になりました」を皆で合唱した、と当時のニュースに書いてありました。

考えるとその曲の歌詞も映画のテーマに沿っており良いエピソードだな、と思いました。

 

 そして、劇中終始画面に写り込み、その必要性が強調される紙幣や硬貨。

いつの時代でも、命の次に、いや命よりも大事なモノなのが痛いほどわかりました。

 

 斜陽していく日本。

おかしな学説を重用し、富裕層を新しい貴族階級にしようとする立法府と行政府の裏で、年々増加する非正規雇用

近年その一番厚い消費者層を破壊しながら、受け皿の社会福祉を徹底的に縮小していく与党と行政府には、恐怖と憤りを感じます。

 

 映画完成後、佐々部監督は安倍首相にこの映画のDVDを送ったそうです。その後、昭恵夫人から

「現代の若者の貧困化の実情を知り、若者にとっても希望を抱ける社会のありかたについて改めて考えさせられた」

というコメントを受け取ったとありました。

 

・・・若者?・・・考えさせられた?・・・それだけ?

 

 職業訓練には、働く主力の20代30代がゴロゴロ参加していました。私を含め、周りの若者や同年代達の多くが、産業構造の変化による失業の後、長い求職という休眠状態でした。

消極的な無就労者の数を入れると、失業者の数はもっと多くなると思います。

また、すぐに辞めるのがわかっている様な、使い捨ての仕事も多い。変わりはいくらでもいるというスタンスの募集です。

ある人は募集要項を見て「人間のする仕事じゃない」と言います。

そこで働いたとしても、円満な生活が出来て、将来を設計するだけの十分な対価が無いのです。

 

イス取りゲームのイスすら無い。動くだけ損、踊るだけ損な時代だ、と思います。

 

 メッセージも多く入っていますが、若い役者たちが熱演する青春映画としても、忘れられない良作だと思います。

何かキッカケとして観てもらえればな、と思っています。

 

「オジサンも、何とか頑張らなくちゃなぁ」

それでは、次の更新まで!