「地獄のハイウェイ Damnation alley」です。
みなさん、こんにちわ。水の心です。
今日は、ハヤカワ文庫、昭和47年発行、ロジャー・ゼラズニー著
「地獄のハイウェイ Damnation alley」です。
この小説を購入したのは、約35年前という、どこで買ったのか忘れてしまった位、古いものです。
米国で発表から10年後の1977年には、20世紀フォックス提供で
「世界が燃えつきる日」という名で映画化もされました。
小学生の頃の懐かしい映画のノベライズだ、と思って購入した所、全く反対、
全くストーリーの違う原作小説で、しかもカタルシスを感じる事が出来る
「イイ小説」なのでした。
あらすじは、殺しもいとわない、生まれながらのならず者
「ヘル(地獄)・タナー」が、
西海岸の「カリフォルニア国」から、ペスト菌によって滅びつつある東海岸の「ボストン国」に向けて、全長9.8㍍の特殊武装装甲車に乗って、ハフィカイン(ペスト)血清を届ける、という大陸横断冒険SFです。
その世界は、月、火星、土星に人間を送る程、進んだ文明を持つにいたったが、核の「三日戦争」によって、国家と地球環境が壊滅し激変。
上空には、おかしな色のオーロラが光り、乱気流が、低い高度で暴れ回り、スコールの様に石、砂が降り、人類自体も滅亡の危機が潜在する世界です。
大陸横断中遭遇する、残留放射能の影響を受けた怪生物や、色々な人間達。
なかでも、ボストンに近くなり、助けてもらう事になった、サム・ポッター一家。
そこで、タナーは、一家の息子ジェリーの質問に答えます。
「おれは機械の番人になりたかった」
「おれはいつかそれ(でっかい機械)を探しにいって、見つけてやるぞ。
それから、その機械の番人になるんだ
ー油をさしたり、あっちこっちのナットを締めたり、すりへった部品をかえたり、きれいにみがいたり、調節したりする人間になるんだ。
そしたら、なにもかもうまくいくようになる。
天気がよくなるし、みんながたっぷり食えるし、
ケンカも病人も酔っぱらいもなくなるし、
ほしくても持てないもんなんてなくなるから、だれも盗みをしなくてすむ
ーそれがおれの夢だったー
<でっかい機械>の番人。
ただ、そいつが見つからなかったのさ」
タナーは、暴走族「ヘルス・エンジェルス」の一員で、皆から恐れられ、恨みを買い、嫌われ、目に余る乱暴者なのですが、ふとした時に、純粋な描写があります。
作者のロジャー・ゼラズニーは、神話をモチーフにした作風が知られ、日本神話もベースにした作品もあるとの事。
そして、本人は、当時愛煙家で、複数の格闘技の熟練者。
なので、それらは作品中に影響しているそうです。言われてみると、タナーのバイオレント描写も納得です。
タナーは仲間を失い、装甲車も放棄、ボロボロになりながらもバイクに乗り、なんとかボストンに到着。
翌年、コモン公園にハーレーに乗ったタナーの巨大な像が立ちます。しかし、除幕式の日、像にダーティーな落書きをしてあるのと、車が盗まれているのが発見され
「コモン公園をおそう嵐は、いまもなおかれを鞭うち、空はいまもなおかれの頭上に汚物をぶちまけている。」
の一文で終わります。
中盤の<でっかい機械>と合わせて、なんとも皮肉が効いて、カッコイイ終わり方なんだろうか。
背負った荷物が大き過ぎたのか。
ボストン到着後の描写は、たった8行だけなので、タナーが何を考え、何をしたのかわかりませんが、大歓迎され、定着しようとしたタナーの悪戦苦闘、どんどんボストン住人から浮いていく状況が想像できます。
20世紀フォックスの映画「世界が燃えつきる日」は、
監督「エアポート1975」「ミッドウェイ」のジャック・スマイト。
ジャン・マイケル・ビンセント(ビッグ・ウェンズデー)
ポール・ウィンフィールド(ターミネーター、トラクスラー警部)
キップ・ニーヴン(ダーティーハリー2、処刑チームの白バイ警官)
らの出演です。
初見は、小学生の頃でしょうか、特殊装甲車「ランドマスター号」が異常にカッコよかったのを憶えています。
しかし、英語でも「カルト映画」や「バッドムービー」のタイトルで出てきます。
wikiでは、どうも、シナリオが1回書き換えられている様で、最初の方は、著者ゼラズニーも満足でしたが、それが映画館に観に行ってびっくりだったそうで、あまりこの映画を好きではなかったそうです。
大作として、20億4000万円で製作するも、核戦争後の廃墟や、怪生物の製作が出来ず。合成でミュータント巨大サソリを撮影しましたが、これは、この映画を別の意味で有名にしています。
そして、人喰いゴキブリのシーンでは、マットに数多くのゴム製のゴキブリを乗せて、そのマットを引っ張って、人間を追いかけるシーンを撮りましたが、これがまた、コントの様な出来具合です。
20世紀フォックスは、あまりの出来に、ランドマスター号のシーンを増やすように要求。地軸が傾いた異常な大気を演出する為に、空のシーンの80%に光学特殊効果を入れる為、10か月遅滞。
この年のSF映画は、この「地球が~」と「スターウオーズ」で「スターウオーズ」は大ヒット。
その為「地球が~」は、再編集を強いられ、これによってますます公開が延長。
監督のコントロールは困難を極め、人気俳優のジョージ・ペパードには残念でしたが、ストーリー的に大きな意味を持ついくつかのシーンを含む、フィルムの大部分は、削除されました。
そして、ようやく1977年10月21日公開。
酷い批評と共に、興行的にも全く振るいませんでした。
この映画の一番の目玉、特殊装甲車ランドマスター号は、当時、約4200万円で製作されました。
その後、1980年代、90年代と、米国のどこかの駐車場で朽ちていく写真が、映画雑誌やSF雑誌に載っていました。
何年かに一回は掲載されていたと思います。廃棄されていないだけでも、
ありがたい、ランドマスター号の生存報告の様な感じでした。
が、2005年。個人によって買い取られレストア。現在は、米国改造車のショーや、TV番組などに出演、いい感じに大事にされているようです。
また、米国CBSのSFTVシリーズ「ARKⅡ」の車両とは似ているけれどまったく違うそうです。
原作小説に比べ、映画は良いとこナシの、ガッカリ作品ですが、
日曜の夜にやっていた「日曜洋画劇場」での、アメリカSF映画のワクワク感と、「楽しい日曜日の終わり」を告げる日曜映画劇場のテーマミュージック「So In Love」が混ざって、なにかしら物悲しさと懐かしい感情が沸き起こります。
書物としては、決して高尚なものではなく、青少年向きでもあるのですが、なにかこう、引き込まれる作品です。
当時320円、現在790円!ですが、面白い作品ですので、冒険心溢れる諸兄おススメの一冊です。
それでは、また次の更新まで!